ツエーゲン金沢

スタジアムを埋め尽くす 9000人あまりの観衆。選手と同じ真っ赤なユニフォームに身を包んだ筆者は、声を枯らさんばかりに叫ぶ。

♪さあ行こうぜ ツエーゲーン さあ行こうぜ ツエーゲン
ラーラ ラララ ラーララララーラーラ カモン カモン ツエーゲン カモン うおおおおお!!

飛び散る汗、ほとばしる熱気… 私のパッションは最高潮に達していた。
いつも冷静沈着、何事にもクールなことで知られる筆者が、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
その原因は、今回の金沢ライフマップのテーマにあった。

ツエーゲンって?

グランゼーラから車を10分ほど走らせると見えてくる、大きな陸上競技場。この陸上競技場をホームグラウンドとし、「石川からJリーグへ、石川から世界へ。」というキャッチフレーズを掲げて奮闘している、金沢のサッカークラブがある。そう、そのクラブこそ、今回の金沢ライフマップのテーマであり、筆者の魂(ソウル)を揺さぶり続ける、 われらがツエーゲン金沢。

♪カーナザーワー ゲット ゴール カーナザーワー (コイコイコイコイ)

加賀百万石・金沢のサッカークラブ「ツエーゲン金沢」。真っ赤なユニフォームがカッコいい

ZWEIGEN(ツエーゲン)ってどんな意味?

「ツエーゲン金沢」の「ツエーゲン」は、アルファベットでは“ZWEIGEN”とつづる。これは、ドイツ語で「2」を意味する“zwei” (ツヴァイ)と、「進む」を意味する”gehen”(ゲーン)を組み合わせたもの。「2」とはすなわち「チームとサポーター」。つまり“ZEIGEN” という名前には、「チームとサポーターがともに進んでいく」という意味がこめられている。

と、カッコよくて小洒落たチーム名かと思いきや、実は「ツエーゲン」には、もう一つの意味がある。
「~げん」とは金沢弁で「~です」「~だ」という意味。つまり「つえーげん!」で「強いんだ!」となる。ドイツ語と金沢弁のダブルミーニングによって、地域色を強く打ち出しながら、それでいてカッコイイ、一度聞くと忘れられないチーム名だ。

ちなみにグランゼーラ4コマ「金沢独立戦線」に登場するメカの名前も金沢弁が由来だ

本気でJリーグ入りを目指す、JFLのチーム

メインスタンドを埋め尽くす観客。ツエーゲンのJリーグ昇格は、サポーターにとっても悲願だ

ツエーゲン金沢は、JFL(日本フットボール リーグ)に所属するサッカークラブだ。JFLはJリーグの一つ下のカテゴリであり、ここで JFL2位以内に入ったチームが、翌年Jリーグの2部であるJ2へと昇格できる。結成当初から、Jリーグ昇格がツエーゲン金沢の悲願。今年こそっ!という意気込みで、チームはもちろん、サポーターや地域と一丸になってシーズンを戦っている。

※JFL(日本フットボールリーグ)とは?

日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と地域リー グの中間に位置するカテゴリであり、日本サッカーのリーグ構成で3部に相当するJFLは、全17 チーム(2012 年現在)。Jリーグへの加盟要件 (※後述)を満たしたうえで、JFLで1位になるとJ2へ自動昇格。また、JFLで2位になるとJ2全22チーム中21位と戦い、勝利するとJ2へと 昇格することができる。まさに、プロサッカーチームへの登竜門とも言える激戦区だ。

結成、そしてJリーグへの戦い

ツエーゲン金沢は 2006 年結成の若いチームだが、実は前身となるチームがある。その名を「金沢 SC(サッカークラブ)」。1956年発足という長い歴史を持つチームで、1975 年からは地域リーグ「北信越フットボールリーグ」に加盟していた。

※北信越リーグとは?

北信越リーグは、日本に9つある地域リーグのひとつ。北信越地方の5県(長野県・新潟県・富山県・石川県・福井県)から16のクラブチームが参加しており、1部リーグと2部リーグに8チームずつ分かれている(2012年現在)。

1956年~2006年 金沢SC発足から、北信越リーグへ。そしてツエーゲン金沢が誕生

発足から着々と力をつけてきた金沢 SC は、1975年に北信越リーグに加盟。長い戦いの末、2004年に北信越リーグ1部で優勝を果たす。そして2年後の 2006 年、金沢 SC を母体として「ツエーゲン金沢」が誕生。将来のJリーグ入りを本気で目指した活動を開始した。まず最初の目標は、北信越リーグを勝ち上がり、JFLに昇格することだ!

2006~2008年 北信越リーグ時代の通り名は”JFLキラー”!

Jリーグ入りを目指すため、多数の元Jリーガーを獲得して勝負に臨んだツエーゲン金沢。しかし、多数の強豪がひしめく北信越リーグでの戦いは、なかなか思い通りにいかなかった。デビュー戦とその次の試合こそ、7-0という大量得点を挙げてその強さを示したものの、その後が続かず、結果的に「2位以内」という JFL昇格要件を果たせない年が続いた。

その一方、2008 年の天皇杯全日本サッカー選手権大会では、当時JFLに所属していた、カターレ富山やSAGAWA SHIGA FC などの JFLチームを相手に勝利。JFL チームとの公式戦無敗という成績を成し遂げ、「JFLキラー」という異名が定着していた。

2009年 苦しい戦いの末、ついに北信越リーグからJFLへ昇格

2009年には、京都サンガF.C. のヘッドコーチだった上野展裕氏を監督とし、元Jリーガーやブラジルから選手を獲得するなど、戦力を徹底補強。北信越リーグでは惜しくも3位に終わったものの、全国社会人サッカー選手権大会で準優勝を果たし、全国地域リーグ決勝大会への出場権を獲得した。
全国地域リーグ決勝大会でも3位に終わるが、FC 刈谷との入替戦に勝利し、ついに JFL へと昇格を決めた。全国リーグへの参加という、石川県のサッカークラブとしては史上初の快挙を成し遂げた瞬間だった。

2010年~ JFLからJリーグへ昇格するため、突破しなくてはならない3つの壁

JFL からJリーグに昇格するためには、ただ上位にランクインすれば良いというものではない。Jリーグに昇格するには、サッカークラブやホームスタジアムも、さまざまな要件を満たさなくてはならない。ツエーゲン金沢は、既に多くの要件をクリアする準備は整っているが、いまだ大きな壁となって立ちふさがっているいくつかの条件を紹介しよう。それは「JFL で2位以内に入る」、「1年間の平均観客数が 3000 人を上回っている」、「ホームスタジアムを整備する」 といったものだ。これらの条件をクリアするため、われわれにできることは何かないのだろうか。いや、きっとあるはずだ。

JFLで2位以内に入る

2011年度までは、JFLで4位以内に入れば昇格のチャンスがあったのだが、2012年度からはその条件がより厳しくなった。2011年度、ツエーゲン金沢は、シーズン中盤に一瞬だけ首位に立つなど健闘を見せたが、終わってみれば結果は7位。このように残念な事態になった原因としてまず第一に考えられるのは、われわれサポーターの応援が足りなかったことだろう。今年こそはもっとスタジアムに頻繁に出向いて、力の限り応援しなければなるまい。

♪ウィーアーバモ ツエーゲン オッオッオッオオッオー

1試合あたりの平均入場者数が3000人を上回っている

1試合あたりの平均入場者数は、2010年度は 1547人、2011年度は 2504人と爆増しているものの、3000 人にはあと一歩足りない。496人のまだ見ぬツエーゲンサポーターたちよ!西部緑地公園へ集え!

♪ウィーアーツエーゲン 金沢の プライドにかけて オーオーオー

ホームスタジアムの整備

年間雨日数日本一をほこる石川県。そんな石川県が運営しているにもかかわらず、ツエーゲンのホームスタジアム・西部緑地公園陸上競技場は、Jリーグが求める基準に達しない点が何箇所かある。われわれサポーターが積極的に試合を観戦して、ツエーゲンの財政を潤わせるのが最善手といえよう。

♪ラララ ラーラー ララララー バモ金沢一 (ハイハイハイ!)

タイプリュータ・突撃インタビュー!

タイプリュータ突撃インタビュー!
選手・監督からのコメント

2012年5月20日 春の1万人チャレンジデー観戦記

シーズン中に定期的に開催される「1万人チ ャレンジデー」。観客数1万人を目指し、当日は公式試合だけでなくサッカー教室やチャリティーオークションなどのイベントも催される、まさにツエーゲンのお祭り。昨年は夏と秋に開催され、夏には我々グランゼーラの革命戦士たちもほぼ全員参加し、みごと観客数1万人を達成したことは記憶に新しい。
まさに、今回の記事のためにあると言っても過言ではないこの試合。天気も快晴で、絶好のサッカー日和となった。ここでは、サッカ一観戦をしたことがない人への紹介を交えながら、当日の試合内容をお届けしよう。

試合前にスタジアム前で開催されていたチャリティーオークション。選手のスパイク等が出品され、その売上の全額が東日本大震災の復興募金として寄付される

広大な無料駐車スペース!

上空から見た西部緑地公園。2面の陸上競技場のほか、野球場や展示場、そして圧倒的な駐車スペース。

1万人チャレンジデーだけあって、当日の西部緑地公園は多くの人で大盛り上がり!しかし、この観客の量でも、余裕で車を駐車することができる。その駐車スペースは約 3500台分と非常に広大。しかも全て無料!普通のスタジアムでは難しい場合もあるマイカーでの観戦も、西部緑地公園なら問題ない。

悲願!1万人チャレンジデーに勝利を!

今まで1万人チャレンジデーでのツエーゲン金沢の戦績は、なんと4戦全敗… J2 昇格には絶対落とせないこの試合、今度こそ勝ってもらわねば!先のインタビューでの増氏の宣言通り3-0で快勝するのか?はたまた混戦模様となるのか? 大注目の試合が、ついにキックオフ!

過去の1万人チャレンジデーでの観客数の推移。第三回では、観客数11,234人を記録し、目標を達成した
熱がこもるスタジアムに詰めかけた観客。メインスタンドはほぼ満員だが、果たして、観客数は1万人を突破するのか?

注目の一戦。強豪を打ち倒せ!

気合の入るツエーゲン金沢のイレブンとゲンゾー。選手の前にいるのは、試合前に行われていたサッカー教室に参加していた少年たち

注目の一戦。強豪を打ち倒せ!対戦相手は、現在JFL3位の強豪「V・ファーレン長崎」。サポーターとしては、ぜひとも打ち破って、1万人チャレンジデーを勝利で終えて欲しい!観客席も凄い賑わいを見せ、座れる席を探さなくてはならない状態だ。どうにか座れる場所を確保した頃には、選手の入場が始まっていた。整列するツ エーゲンの戦士たち。さあ、一万人チャレンジデーでの初勝利を見せてくれ!

♪ラーラ ラララ ラーララララーラ ーラ カモン カモン ツエーゲン カモン

動かない前半

互いに何度もゴールを脅かすも決 定打に欠け、もどかしくも無得点のまま試合は進んでいく。ツエーゲンの選手が放ったシュートが、惜しくもゴールポストに阻まれる。 思わず「惜しい!」と叫んでしまう。まわりのサポーターも、同じように叫んでいる。観客席の気持ちはひとつになっていた。固唾を飲んで見守る中、そのまま動きがなく前半が終了。0-0のまま、勝負の行方は後半戦に持ち越された。
きっと応援が足りないせいだ!後半はもっと気持ちを入れて応援しなければ!

♪オオ オオー オオーオオー オオ 金沢 オオーオーリス

応援に熱が入る、ツエーゲン金沢のサポーターチーム「Z-BLITZ」。響き渡るツエーゲン金沢の応援歌
果敢にゴールに迫る10番石館選手。幾度も惜しいシーンが続く

後半戦・気迫のプレーに阻まれる攻撃


試合はカードが出る激しい試合展開に

ツエーゲンの選手がゴール前までボールを繋ぐも、V・ファーレンの気迫あふれるプレーで阻まれてしまう。惜しいシーンが続くが、V・ファーレンの身体を張ったディフェンスを抜くことができない。後半には V・ファーレンの 10 番佐藤選手にイエローカード、5番河端選手にレッドカードが出るなど、激しい試合展開に。気迫で相手に負けるな、ツエーゲン!

♪さあ行こうぜ ツエーゲーン さあ行こうぜ ッ エーゲン ラーラ ラララ ラーララララーラーラ

そしてついに試合が動く

両者無得点のまま試合が進んでいたが、ついに後半23分、試合が動く。V・ファーレン長崎の20番杉山選手の放ったボレーシュートが、ツエーゲンのゴールに突き刺さる。思わず悲鳴を上げる筆者。いやいや、時間はまだたっぷりある。よりいっそう、応援に気持ちを入れる。まだだ、諦めるなツエーゲン!

♪共にいこう 心はひとつ 俺達の 誇り 金沢 オイオイオイオイオイオイ!

キャプテン諸江健太選手のヘディングシュートも炸裂! まだまだツエーゲンは諦めていない!

同点のフリーキックチャンス!

相手のファールから生じた、フリーキックのチャンス。決めろ、ツエーゲン!

後半39分、ツエーゲンに大チャンスが訪れる。相手のファールから、ペナルティエリア前でのフリーキックを得た!残り時間はあとわずか。このチャンスは、モノにするしかない!蹴るのは10番石舘選手。彼ならきっと、決めてくれる――観客の心は再びひとつとなり、そのシュートの先を追った。
ゴールポスト右上ギリギリを狙ったシュートコースはバッチリだった。ゴールキーパーの懸命に伸ばした左手をすりぬけたものの、軌道はわずかに逸れ、 ゴールポストに阻まれてしまった。観客席から悲鳴にも似た叫びがあがる。
だめだ、応援が足りなかったせいだ!もっともっと 応援しなければ!

♪GO GO GO GO 金沢! GO GO GO GO 金沢!

そして試合は…

後半の45分が過ぎる。アディショナルタイムは3分。ツエーゲンの選手は最後まで諦めない。なら、筆者も諦めるわけにはいかない。声を上げて精一杯応援しよう。声が届けば、きっとツエーゲンの選手たちが、相手のゴールにシュートを叩きこんでくれるはず …!
しかし、無情にも時が経ち、ゲームセットのホイッスルが鳴る。その場にへたり込む筆者。無気力な声を上げ、席を立つ観客たち。ツエーゲン金沢はシュート10本を打つも、0-1で惜敗した。

ガックリと悔しがるツエーゲンの選手たち。次こそ勝利するところを見せてくれ!
試合後のグラウンドに下りることも出来る。子供たちが飛び出し、親子サッカー教室が開かれていた

次こそ地元のファンに晴れ姿を

試合後のスタジアム出口付近。観客は皆一様に悔しそうな顔を浮かべていた。このサポーターを手放さないためにも、次こそ勝ってくれ、ツエーゲン!

試合には負けてしまったが、観客数はどうなったのだ ろうか。スタジアム内に響くアナウンスの声。観客数――9136 。目標の1万人には届かなかったものの、9000 人を超えるサポーターが詰めかけたこの試合だからこそ、勝って欲しかった。
1万人チャレンジデーでの戦績は5連敗、ジンクスを断ち切ることは出来なかった。せめて1点は取って欲 しかったというのが、サポーターの正直な感想だろう。3-0で勝利を約束していた嶝氏に、どういうことかと一言物申しに行かねばなるまい。いつまでも、ホームで勝てないツエーゲンでは困るのだ。次こそ、地元で華々しい勝利を収め、堂々としたツエーゲン金沢の姿を見せて欲しい!

♪さあ行こうぜ ツエーゲーン さあ行こうぜ ツエーゲン

この結果はどういうことだ!?

一万人チャレンジデーでふがいない試合を目の当たりにした筆者。事務所が西部緑地公園の近くにあることをいいことに、怒りに任せて嶝氏に物申すべく、事務所に飛び込んだ。すると、事務所に併設されたカフェで、嶝氏を発見した!

タイプ:今日は3-0で勝つって言ってたじゃないですか!?

燈氏:残念ですが、次に期待してください。

タイプ:…次は勝てるんですね?(呼吸を整えながら)

燈氏:次こそ、サポーターのみなさんに勝利をお届けします!(力強く)

タイプ:…わかりました。私はもちろん、次の1万人チャレンジデーにも、勝利を信じてスタジアムに応援に行きます!次はいつ開催してもらえるんですか?

燈氏:8月4日(土) 16時キックオフ、AC長野パルセイロ戦です!真夏のスタジアムで、勝利をみんなで分かち合いたい。ご声援よろしくお願いします!

タイプ:いつか、1万人と言わず3万人チャレンジデーくらい出来るようになったらいいですね!頑張ってください!(感激した面持ちで)

燈氏:ありがとうございます。

境氏に掴みかかった、事務所に併設された「ロッカールームカフェ」。名物「坦々井」がオススメ。試合前や後には、選手に会えるかも…?

編集後記

待ちに待った、北陸新幹線が開業するのは 2014年度中 (2015年春)。それまでに、ツエーゲン金沢の J2昇格という晴れ姿を見ることはできるのか。きっと次の試合は、私たちサポーターの前にカッコいい姿を見せてくれるに違いない。そのために、応援が足りないというのなら、次の1万人チャレンジデーはもちろん、すべての試合に行って応援しよう。明日のツエーゲン金沢を作るのは、他ならぬ我々サポーターなのだから。

♪愛してる 俺たちの ツエーゲン 誇り胸にして 俺らの夢は続いてく 金沢魂 あるかぎり

最後に、グランゼーラからツエーゲン金沢へのエールとして、2014年度中に開業する北陸新幹線の想像図を送りたい。チームが活躍すれば、こんな「ツエーゲン専用車両」だって、実現するはずだ。長野や東京まで、選手が快適に移動できれば、より強いツエーゲン金沢の姿を見られるに違いない。

金沢駅のホームに停車する、ツエーゲン金沢専用の北陸新幹線N700系の想像図

金沢駅の象徴・鼓門から飛び出し、世界各地を飛び回る構想も。選手は試合会場まで、ストレスなく快適に向かうことができるようになる。常軌を逸した我々にレールなど必要ないのだ

<制作・文責>タイプリュータ・管次郎
<デザイン>かっくん
<監修>九条、みいはあ
<協力>ツエーゲン金沢
<ツエーゲン金沢北陸新幹線CG>hatake、かっくん

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