卯辰山

金沢の夜景が一望できる、絶好のデートスポット

金沢市街からすぐ近くにある、小さな山「卯辰山(うたつやま)」。標高たった 141m の小高い山だが、金沢市街を一望できるその見晴らしのよさで、地元の人たちの人気スポットとなってい る。特に夜景の美しさは素晴らしく、週末の夜には、多くの恋人たちがその夜景とともに時を過ごすべく訪れる。今回の金沢ライフマップで は、そんな絶好のデートスポットである「卯辰山」を紹介しよう。

卯辰山からの景色。金沢市街を見渡すには最高のスポットだ

そもそも卯辰山って?

卯辰山は、日本の歴史公園100 選にも選ばれている、金沢市の北東に位置する山だ。卯辰山に関する豆知識を知っておくことで、実際のデートの時、話の種になれば幸いである。

卯辰山?向山?臥竜山?

卯辰山と金沢城などの地理関係を示す地図

この卯辰山は多くの別名を持っており、金沢城の向かい側にあるから「向山(むかいやま)」、古くは神社の名から取った「宇多須山(うたすやま)」、上杉謙信がつけた名「臥竜山(がりゅうざん)」の他、夢香山(むこうやま)、春日山(かすがやま)、宇多津山(うたつやま)など、様々な別名がある。これだけ多くの名を持つと いうことは、それだけ多くの人に愛されてきた山である証ではないだろうか。

金沢城から「卯辰の方角」ではない!?

そんな多くの名を持つ卯辰山だが、その由来は、金沢城から見て「卯辰の方角」にあることからだと言われている。しかし、上記の地図を見てみると、正直卯辰の方角とは言いがたい。調べてみると、由来には諸説あることが分かった。かつて山頂付近にあった「宇多須神社」の社記では、卯と辰の文様が刻まれた古鏡が出土したためだと言われている。 他にも、その神社の名前「宇多須」が「宇多津」に変わったためだとか、河北郡小坂村小字卯辰村があったためだとか、様々な説があり、はっきりした由来はわかっていない。

あの有名武将も名付け親?

同じ境内に3つの神社がある印辰山三社。左が卯辰神社、右が豊国神社。写真には写っていないが、卯辰神社の左に愛宕神社がある

かの戦国武将、上杉謙信が七尾城の城主・畠山春王丸(はたけやまはるおうまる)を攻め た際、陣を置いたのが卯辰山だ。先に紹介した卯辰山の別名「臥龍山(がりゅうざん)」は、その時に上杉謙信が竜が横たわった形に似ていることから名付けたと言われている。現在では、その陣があったとされる場所に、卯辰山三社として「卯辰神社」「愛宕(あたご)神社」「豊国(とよくに)神社」があり、ながく山の天神さんと言って親しまれ、信仰を得ているという。

かつては登山が禁じられていた

今でこそロマンチックな場所だが、江戸時代は金沢城のほぼ全域を見渡せることから、庶民の登山が厳しく禁じられていた。1858年(安政 5年)、冷夏や長雨などによる米の不作に苦しんだ加賀国の民衆は、卯辰山への登山が禁じられているにも関わらず、2000名で卯辰山へと登り、金沢城に向けて米の解放を訴えた。後に 「安政の泣き一揆」と呼ばれる一揆である。その声は、直線距離にして1.7km離れた金沢城のお殿様にも届いたという。その結果、首謀者である7名が厳罰に処されたものの、翌日には藩の御蔵米おくらまいが放出され、米の価格も下げられる命令が出され、この騒動は決着した。 この一揆は、当時稀に見る「暴力を伴わない一揆」として、現在のデモなどの先駆けとも言える騒動と言われている。

卯辰山の麓にある寿径寺(じゅけいじ)。ここには、安政の泣き一揆で厳罰に処された7名を供養する「七稲地蔵(なないねじぞう)」がある

卯辰山デートマップ

そろそろ本題、卯辰山のデートスポットを紹介しよう。卯辰山には夜景を楽しめる展望台はもちろん、食事処や無料駐車場、トイレなどもしっかり用意されている。山と聞くと、登山やハイキングなど、なんだかデートスポットには不向きではないかと感じるかもしれないが、卯辰山はそうではない。ちょっと車やバスで向かって夜景を楽しむー なんて、気軽に楽しめるのが魅力だ。ここでは、実際に筆者がオススメできる、卯辰山の名スポットを紹介しよう。

しっかりと整備された山道は、基本的に全て車で入ることができ、いたる所に駐車場が完備されている

代表的な展望台だけあって、ベンチや街灯なども多く、キレイに整備されている。初めてのデートでも安心のスポットだ。

山から突き出しているため、左右に広く見渡せる良スポット。ただし、街灯がなく夜は真っ暗なので、ある程度親密になってからの利用をオススメしたい

昼間に見ると、白山連峰や浅野川の姿も見られる。取材の日は曇っていたが、そんな薄曇りの景色こそ金沢らしい景色

兼六園方面の中腹には、食事処が軒を連ねている。夜景を楽しみながら食事というのも、なかなかにロマンチック
陶芸や漆芸、染物などの体験ができる工芸工房。金沢の伝統工芸を堪能しつつ、夜を待つのもオススメだ
卯辰山のいたるところには無料駐車場やトイレがあり、いろいろと安心だ。こういったところのトイレは汚いのではないかと心配されるかもしれないが、卯辰山のトイレはどれもキレイ!

番外編・昼のみどころ

卯辰山は夜景だけではなく、昼のみどころも豊富だ。ここでは、その一部を紹介しよう

春には山のいたるところに桜が咲き誇り、金沢市街と日本海が同時に楽しめる。これぞ100選の絶景。お花見にも最適だ
5月中にぜひ訪れたいスポットのひとつ。一面に咲き誇るツツジを見ることができる

6月中なら、卯山三社の近くの花菖蒲慮が満開になる。池の間に渡された橋を渡って、間近に咲く菖蒲を楽しめる

デートスポットとしての実力は?

デートスポットとして紹介する以上、「デートに使えなくてはならない。そんなわけで、筆者も仕事にかこつけて、意中の女性をデートに誘ってみることにした。やはり夜景が美しいデートスポットともなれば、男一人で取材するなど虚しい。無事、約束を取り付けた筆者は、愛車を駆り、夜景を二人で楽しむべく卯辰山へ向かった。

望湖台からの夕景。天気が良ければ、日本海に沈みゆく夕日を見ることができる

夜景を楽しみながらの食事も

山の中南に軒を連ねる食事処。 軽いハイキングの後の美味しい食事も、卯辰山を出ることなく楽しめる

デートスポットである以上、景色だけでなくその後の食事も考慮しなくてはならない。卯辰山はその点も抑えられている。卯辰山の中腹には、夜景を楽しみながら食事もできる、雰囲気たっぷりの食事処が軒を連ねている。石川県屈指の有名ステーキ屋や、串焼とおいしいお酒が楽しめる居酒屋、美味しいコーヒーが味わえる喫茶店など、バリエーションも豊富だ。

やったぜ卯辰山!

徐々に夜がふけていく中、最後にもう一度彼女と一緒に望湖台に立ち寄った。時刻は既に 22 時を回ろうとしており、金沢の街並みも、どこか光が少なくなったように感じた。いい雰囲気だ、やったぜ卯辰山!そろそろ頃合として、ひとつ彼女の手でも握ってみようか…そう筆者が決意しようとしたとき、彼女は言った。そろそろ遅いし、もう帰ろう、と。…結局、その日のデートの密かな目標は果たされなかった。しかし、彼女との距離はきっと近づいたはずだと、自身のチキンハートをごまかす男がいたことは秘密だ。

編集後記

…なんて記事を、堂々と一同に提出したところ、妬みにも似た叱責を買うことと なった。仕事中にそそくさと抜け出して、デートのついでに取材した事がバレたからである。デート中の筆者のTwitter は、ライフマップスタッフ一同により炎上状態と化していたが、ミーティングの場となるとより熱が入り、筆者を攻め立てることとなった。結局、ミーティングという名の審問会は数時間に及び、それが終わった後、そこにはただ疲弊し切った筆者の姿があった。それでも、仕事より優先してやる事があったのだ。反省はしている。だが、後悔はしていない。
一次の日から、筆者への仕事量が倍増したのは、また別の話である。

<制作・文責>タイプリュータ
<デザイン>かっくん
<監修>九条、みいはあ、管次郎

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