8月某日深夜、金沢港の護岸にて…
お待ちかね、今回の金沢ライフマップのテーマは「金沢港」。
どうか、頬をなでる心地良い潮風に思いをはせながら読み進めてほしい。
平日のランチは海を眺めながら
ライフマップではおなじみ、金沢の肺静脈・50m道路。陸の玄関口・金沢駅に対して、グランゼーラをはさんだ反対側に位置するのが、国際物流拠点・金沢港だ。グランゼーラからは車で約10分。昼休みはシーサイドでランチタイムと洒落こむ、なんてことも気軽にできてしまうのだ。 金沢港で発着する主な船は、韓国・中国・北米・東南アジアとの間の定期コンテナ便。普段は一般の人にとってあまり用事のある場所ではないかもしれないが、そんなスポットこそ我々にとって紹介しがいがあろうというもの。それでは、金沢港の知られざる魅力を探っていこう。
開港までの歴史 ~栄枯盛衰~
金沢港が開港したのは1970(昭和45)年。その基盤になったのが、「大野港」と「金石港」というかつて存在した2つの港だ。その歴史、そして金沢港の開港に至るまでの経緯を紹介しよう。
奈良時代 渤海(ぼっかい)との交流
古くから栄えていた大野港。その歴史をさかのぼれば、奈良時代から渤海(現在の中国東北部~ロシア東南部)の船がしばしば来航していたという。
江戸時代 北前船の活躍
江戸時代の物流を担った「北前船(きたまえぶね)」が、大野港を本拠として活躍。関門海峡を経て大坂や江戸への航路を行き交った。
江戸時代 銭屋五兵衛の繁栄
江戸時代の大商人・銭屋五兵衛が、金石港を拠点として広く交易。関西・東北・北海道との間に活発に海運を行った。また、外国との密貿易も盛んに行なっていたという。所有する船の数は200艘にも及んだ。
明治~昭和初期 衰退と停滞
明治時代になると、鉄道など陸上交通網の発達によって、大野・金石両港の勢いは衰退。1933(昭和8)年には、近代的な貿易港として発展させるため、掘り込み式港湾(※)を整備する計画も閣議決定されたものの、第二次世界大戦の開戦によって、その築港はしばらく棚上げされることとなる。
※ 天然の地形を利用する河口港に対して、掘り込み式港湾とは、陸地を掘り込んで人工的に地形を作った港のことをいう。
昭和中期 大野港と金石港が合併し「金沢港」誕生
1954(昭和27)年、大野港と金石港が合併し、金沢港が誕生する。しかしこの時点ではまだ、掘り込み式港湾の築港作業は手つかずのままだった。
昭和後期 計画再開・開港
築港計画が本格的に再始動したきっかけとなったのが、1963(昭和38)年、全国で200名以上の死者を出した記録的な豪雪・いわゆる「三八豪雪」である。貿易港がなく陸上交通に頼りきっていた金沢だが、2m近くの積雪に見舞われて陸上交通がほぼストップ、産業は大打撃に見舞われた。これを受けて急速に築港の機運が高まり、翌年・1964(昭和39)年より掘り込み式港湾が着工。そしてついに1970(昭和45)年、貿易船の入出港が開始し、関税法上の「開港」を果たした。
七つの埠頭と憩いの公園
金沢港は、7ヵ所の埠頭を備える。埠頭ごとに取り扱う貨物の住み分けを行うことによって、荷役の効率化を図っているのだ。また、港の関連施設として、「金沢みなと会館」や「大野お台場公園」が併設され、市民の親しみの場となっている。
①石油埠頭
1970(昭和45)年に供用開始した最初の埠頭。ガソリン・重油・LGPなどの多くのタンクを備え、エネルギー拠点となっている。
②戸水埠頭
1971(昭和46)年に供用開始した埠頭。主にセメントや鋼材などを取り扱う。水深が10mと深いため、大型のクルーズ船も着岸する。
③無量寺埠頭
1973(昭和48)年に供用開始した埠頭。小麦などの穀物を受け入れする。港フェスタなどのイベントにも利用され、広く市民から親しまれている。巡視船「はくさん」の停泊地。
④大野埠頭
1974(昭和49)年に供用開始した埠頭。「大野お台場公園」や「大野弁吉からくり記念館」が隣接する。水辺で楽しめる親水護岸も整備。
⑤御供田埠頭
1978(昭和53)年に供用開始した埠頭。主にコンテナ貨物や鋼材を取り扱う。巨大なガントリークレーンが設置されている。
⑥五郎島埠頭
1984(昭和59)年に供用開始した埠頭。石材・木材・リサイクル用金属を取り扱う。
⑦大浜埠頭
2008(平成20)年に供用開始した新しい埠頭。大型化する国際船へ対応するために作られた水深13mの埠頭で、「大浜国際物流ターミナル」とも呼ぶ。産業機械や建設機械を取り扱う。
金沢みなと会館
無量寺埠頭に隣接した食事、宿泊、貸し会議室など便利なサービスを行なっている施設。 食事は、かけうどん350円、エビフライ定食1500円など。宿泊は、大人一泊5300円(朝食・夕食つき)。貸し会議室は、3時間4200円から利用できる。
大野お台場公園
大野埠頭に隣接した公園。2ヘクタール(阪神甲子園球場約1.5個分)の敷地の中に、水上舞台と500席の観覧席や、芝生広場などを備えている。周辺には、市民が水辺で親しむことのできる親水護岸や、江戸時代に活躍したからくり師・大野弁吉の世界を紹介する記念館も。
金沢港が市民で賑わう日
地元企業の経済活動に多大な貢献を果たしている金沢港であるが、市民が気軽に参加できるイベントもしばしば開催されている。
港フェスタ金沢
金沢港では、毎年、「港フェスタ金沢」というイベントが開催されている。7月14日(土)に開催された今年の港フェスタ金沢のメインイベントは、海上自衛隊護衛艦「おおよど」の体験航海・船内公開。われわれ革命戦士も参加し、全長109m、全幅13mの護衛艦「おおよど」の威容に圧倒された。
その他、巡視船「えちご」の体験航海・船内公開、港湾業務艇「わかな」の体験航海、金沢港見学バスツアーなど、様々な催しが目白押しの港フェスタ。行けなかったという人も、ぜひ来年に期待しよう。
客船の入港イベント
客船が入出港する際には、船内見学会や、ミニコンサートなどの出し物が行われることが多い。最近では、7月20日(金)と8月21日(火)に、客船「CLUB HARMONY」(全長176m)が寄港し、戸水埠頭が一般開放された。
次に客船が寄港するのは、9月9日(日)。日本最大のクルーズ客船「飛鳥Ⅱ」(全長241m)が戸水埠頭にやってくる。船内見学会も行われるので、こちらも乞うご期待だ。
夜の金沢港に、巨大魚を追え!
このコラムは、私、みいはあが文責を負う。
編集会議でうっかり釣りが趣味だと口を滑らせてしまったところ、今回の執筆担当の菅くんに金沢港での釣りをテーマに1コラム書くようにと命令されてしまった。 全く、口は災いのもととはよく言ったものだ。
だが命令されてしまったのだから仕方がない。 他のスタッフも同行してくれるというし、「取材と称して大っぴらに早上がりして、釣りができるという事だな…まぁいいか!」と気持ちを前向きにし、金沢港の入口に位置する大野町、通称「中洲」で竿を出すことにした。
ざわめく水面に昂まる気分!
いざ、実釣開始!
午後7時30分、釣り場に到着。
平日の夜とあって、釣り人はほとんどいない。
この人気ポイントを我々だけでほぼ独占できるのだから、はっきり言って勝ったも同然。
「水面を跳ねてる音が聞こえますよ!」スタッフが奇声をあげる。
入れ食いの予感をひしひしと感じる。余裕だろうとは思っていたが、まさかこれほどとは。
たくさん釣りあげて、グランゼーラいちの弁当男子・タイプリュータくんに料理させて、晩酌をきめよう。
荒くなる鼻息を整えつつ、竿を出した。
そしてアタリが!これは大物か!?
開始30分、当初の予感とはうらはらに未だアタリはない。
まぁ、そうそう簡単に釣れるものではない、そんな事は承知の上だ。
グランゼーラの革命戦士たちはこの程度のもくろみ違いでは全く動揺することなどないのだ。
「あっ、惜しい~!」スタッフの竿にアタリがきた。惜しくも針にはかからなかったが、なにか手応えを感じたようだ。 これではっきりした。ここにはなにか大物がいる!
スタッフ一同の消えかけた闘志の炎が、
再び熱く燃え上がった。
参謀本部司令官・九条Pの怒号が飛ぶ!
開始して2時間が経過していたが我々の熱意もむなしく、あれ以降釣れるどころかアタリすらない。
いわゆるノー感じというやつだ。そこへ参謀本部より九条Pがやってきてしまった。
まずい、こんなところを見られたらまた…
「そんなことよりお腹がすいたから、釣れた魚はどこ?見せてほしい!」
「ま、まだ釣れていません…」
「えっ?それで今回のライフマップは成立するの?大丈夫なの?」
「一応さっきアタリはあったので、もうすこし粘ればなんとか…」
「まぁ、なんとかなるならそれでいいよ。でなきゃ今日は釣れるまで帰らないか、ジャンケンして誰が海に飛び込むか決めるかしかないからね!」
…面白さ原理主義者の九条Pは、自然相手だろうが妥協はしない。
その時、薄暗い水面に現れた、巨大な影!
開始から3時間が経過し、みなの顔に諦めの色が見えてきた。
(ジャンケンになったら最初に出すのはなんだ?やはりグーしかないか?…いや待て、チョキの方がまだしもか…?)
などと考え始めていた、その時だった。
「あっ!何かかかりました!」
見るとスタッフの竿がしなっている。
「落ち着いて、リールを巻きすぎないで!」慎重に声をかける。
「…あれっ?リールが巻けなくなっちゃいました」
落ち着いて糸の行方を見てみると、針は護岸のすき間に生えている草に引っかかっていた。
いくらなんでも水の中に針がないと、魚が釣れる確率は大幅に低下してしまう。一体何をやっているのか。
そうして、緊張が途切れたその時…!
「あっ、あそこに何かいるよっ!」九条Pが叫ぶ。
彼が指差す方向を見ると、薄暗い水面をゆっくり動く、巨大な影が見てとれた。
一同、あわててその影の近辺にしかけを投げ込む。
そこでスタッフの一人、タイプリュータくんが水面にカメラを向けた。
「ちょっとちょっと、何をするの?」
「えっ?アレの写真を撮ろうと思うんですけど…ダメですかね?」
「ダメだよ、フラッシュのせいで謎の生物が逃げたらどうするんだよ!」
このチャンスを無にされてはかなわない、我々は必死だった。
ついに、謎の生物の正体が明らかに?!
みな、興奮しながらも声を押し殺して竿を操るが、謎の生物は全く反応しない。
やはりその場所のヌシのような位置づけにある生物には、我々ごときの姑息な仕掛けなど通用しないという事なのか。
だがしかし、こちらとてこのままでは海に飛び込まされてしまうかもしれないのだから、そう簡単に引き下がるわけにはいかない。
…と、見るとまたしてもタイプリュータが水面にカメラを向けているではないか!
「撮影はやめろと言っただろ!何度も言わせるな!」
「そうは言いますけど、みんな全然釣り上げてくれないじゃないですか!だったらもう、僕が写真を撮るしかないですよ!」
言うが早いか、ついにシャッターが切られ、フラッシュの閃光が水面を照らす。
やはりこれに驚いたのか、謎の生物は動きを速め、暗闇に溶けていってしまった…。
一同からタイプに容赦ない罵声が浴びせられる。だが、いくら彼を責めたところで逃げてしまった謎の生物はもう戻らない。
我々は、彼の手からデジカメをひったくると、固唾をのんで液晶画面を覗き込んだ。
そこに写っていたものとは-。
編集後記
こうして、今回もかろうじて記事を成立させたわれわれ革命戦士一同。
金沢港といえば、会社からほど近いにもかかわらず、これまであまり気に留めたことはなかった。そんな見過ごされがちなスポットの知られざる魅力を紹介することで、またひとつ、読者に金沢という街のおもしろさを感じていただくことができるはずだ。ホッと一安心の革命戦士一同。
――そんな作戦会議室の弛緩した雰囲気を切り裂くように、一通の手紙が舞い込んできた。
金沢ライフマップ係 御中
前略
これまであなたたちが書いてきたライフマップは、ライフマップの皮をかぶった子供の落書きだ。
次回のライフマップで、私が本当のライフマップというものをご覧にいれましょう。
草々
2012年8月31日 謎に包まれた期待の新人より
突如として現れた謎の新人の正体とは!?作戦会議室に吹き荒れる阿鼻叫喚の嵐!
すべての真相は次回のライフマップを待て!
<制作・文責>管次郎、みいはあ
<デザイン>かっくん、タケやん
<監修>九条、タイプリュータ